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2022/09/05

-子どもたちに豊かな地球をつなぐキャンペーン-「いのちの共生を考える-地球は昔に戻れるのだろうか?」

全青協では2020年より、全日本仏教婦人連盟(全仏婦)ならびに日本仏教保育協会(日仏保)と協働して「子どもたちに豊かな地球をつなぐキャンぺーン」を実施してきました。

同キャンぺーンは、お釈迦さまが説いた縁起観、すなわちこの世のすべてのものが繋がり合い、支え合いながら存在しているのだという教えに基づき実施しているものです。「少欲知足」を旨として「持続可能な社会」を実現し、豊かな地球と環境を子どもたちにつないでいくことを目的にしています。

去る9月5日に東京グランドホテル(曹洞宗檀信徒会館)において、全仏婦主催、全青協、日仏保共催にて「地球は昔に戻れるのだろうか―海から今をみる」をテーマとして文化講座を開催しました。当日は感染症対策のため、会場定員を30名に限定し、オンライン配信を同時に行うハイブリッド・ハイフレックス方式をとりました。


▽ 待ったなしの環境問題

講師をつとめていただいたのは、浄土宗長福寺住職で海洋生物学をご専門とする窪川香薫さん(帝京大学客員教授)です。講座では、「海」に焦点を当て、地球温暖化と気候変動、そして海洋のプラスチックゴミの深刻な状況と子どもたちに及ぼす影響についてお話しいただきました。

島国である日本にとっては、今起こっている海洋問題は重大な課題となっています。海水温の上昇によって毎年起こる巨大台風や線状降水帯による水害被害は、多くの犠牲者や被災者を生み出していることはご承知の通りです。

窪川さんは、北極南極の氷が溶けて海面が上昇すると、南太平洋の島嶼国ばかりではなく、日本列島の一部も水面下に沈む可能性があることを指摘しました。また、水産資源の減少と生息地の変化で「将来的には天然のわかめや昆布が食べられなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らしました。

また、「地球温暖化は人為的な原因が圧倒的に大きく、国際機関等が目標としている2050年までに、気温の上昇を産業革命以前から1.5度未満に抑えないと、より甚大な被害を及ぼすでしょう」と語り、今日、世界各国で進められているカーボン・ニュートラル(炭素中立)をはじめとする温暖化対策について解説しました。

温暖化予測の研究で昨年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんの「大洪水がこれから最大の問題となってくる。将来ではなく、今私たちが直面している」という言葉は、温暖化の被害が子どもたちの未来にばかり影響しているのではなく、今まさに私たち大人の世代が直面している深刻かつ卑近な問題であることを示唆しています。


▽ 共生社会の実現へ向けて

窪川さんは、海洋プラスチックゴミの問題が世界的に認知され、各国の海岸で清掃活動が行われているものの、「海流の関係から、日本にプラスチックゴミが集まってくる」と指摘し、「日本はゴミの管理や処理についても先進国になっていかなければならない」と、問題提起しました。

太平洋を流れるいくつかの黒潮の動きは、確かに日本へ向かって流れており、まぐろ等の回遊魚が辿り着く先も日本の沿岸であることによって、私たちは豊かな漁業資源を享受してきました。しかしながら、黒潮に乗って辿り着くのは決して魚類ばかりではなく、大量のプラスチックゴミや、さまざまな廃棄物が流れ着いてしまうのです。海によって生かされてきた日本人が、今まさに取り組まざるを得ない重要な課題だと言えるでしょう。

「海中の有害物質は、マイクロプラスチックに吸着しやすいため、海の生物が摂取し食物連鎖で人間の身体の中に取り込まれていることが排泄物から確認されている」と窪川さんは語ります。「現状では、健康被害については研究が不十分な点もありますが......」と前置きしながらも、健康に対する影響についても懸念材料になっていることを暗に指摘しました。

その上で私たちが、地球温暖化や海洋汚染についてどのような対策を行っていったら良いかについては、次のような提案がなされました。まずは日常生活の中で「捨てない・使わない・リサイクル」という三つの行いを大切にすること、そして「物を大切に扱う。その物が自分にとって社会にとって本当に必要かどうか考える」ということです。

日常生活を送る上で人にとって本当に必要なものとは何なのでしょう?そのような当たり前の問いを、私たち大人は高度成長期以来、経済発展を優先させたために忘れてしまったような気がします。深刻な地球温暖化や海洋汚染は、そのような経済成長を優先してきた私たちの価値観と社会構造の転換を迫っているように思われて仕方ありません。「少欲知足」すなわち、足ることを知るという教えは、仏教で古来伝えられてきたものです。それは、「欲望のままに生きていては、本当の幸福に辿り着くことは出来ない」という教えでありましょう。

窪川さんは、「地球は昔に戻すことができません。進化によって今の社会を作ってきましたが、子どもたちに豊かな地球をつなぐためには、自然と人間との共生を進めていくことが重要です。そのためにも、お釈迦さまが説いた縁起という理を忘れてはいけません。仏教の衆生を救う心をもっともっと大切にしてください」と語り、講演を締めくくりました。

「子どもたちに豊かな地球をつなぐキャンペーン」では、今後も専門家を招いての講演会やワークショップ、プラスチックゴミ収集のためのフィールドワーク等も企画していく予定です。多くの方にご参加いただき、自然の中で生かされている私たちの存在を認識しながら、真の「共生社会」を実現するために進んでまいりましょう。



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