イベント

2017/9/27

臨床仏教研究所公開研究会を開催いたしました

◆臨床仏教師の活動とは
生老病死の苦しみの現場に自ら足を運び、その声やこころを聴く臨床仏教師。実際に臨床仏教師の方々は、医療・教育・福祉等の現場においてどのような活動をして、社会のさまざまな場面で声なき声を聴き、答えなき問いを受け止めておられるのでしょうか。
全青協附属の臨床仏教研究所では、9月27日に公開研究会を開催し、眞木興遼さん(天台宗)、岡部幸子さん(曹洞宗)、伊藤竜信さん(浄土宗)、楠恭信さん(曹洞宗)の四名の臨床仏教師に、現在の活動について発表を行っていただきました。
眞木さんは、東京慈恵会医科大学付属病院にて急性期の患者さんに対するチームケアの一員として活動を行い、病院内で開かれている「いのちのカフェ」においてもケアにあたっています。
岡部さんは茨城県のご自坊にて「親の会(子育て会)」という、不登校のお子さんをもつ親御さんの集まりを開いています。
伊藤さんは山形県の三友堂病院緩和ケア病棟や、介護者サポートネットワーク等にて患者さんとそのご家族のケアにあたられています。
楠さんは、福島県立医科大学会津医療センター等にて傾聴活動をされています。また、地域の超高齢化問題に焦点を当てて、地域包括ケアネットワークの副代表として行政との連携に向けた働きかけをされています。

臨床仏教師の誕生からまだ2年。現場では「なぜここに僧侶が」という声を耳にすることもあるようです。草木の手入れや車いすの方の介助など、専門分野にこだわらない現場での地道な活動よって、さらに信頼を得て現在の活動に至っているのだと切に感じました。

◆「いのち」をつなぐこと
研究会の後半には、質疑応答の時間を設け、臨床仏教師の方々が苦を抱える方の心に寄り添うために、どのようなことを大切にしているか、そして、自らの臨床仏教師としての役割とは何であるか等を伺いました。

仏様の大きなお見守りのもとに「祈る」こと。様々なご縁に目を向けながら、人の痛みを自らの痛みとして、ともに歩みを進めること。そして、「生死」を越えて「いのち」はずっとつながっていくということ??。臨床仏教師の方々は、刻々と変化する現場において、仏様から授かった「いのち」をつなぐ役割を担い、いま何ができるかを常に自らに問いかけられていることを深く感じました。

質疑後、東京大学名誉教授の大井玄先生、ならびに大乗淑徳学園理事長の長谷川匡俊先生よりご講評をいただきました。
大井先生は、「一番大切なことは五感と心をもって『つながり』を感じてもらうことなのだと思います。沢山のいのちが集まって、今のいのちがあります。いのちはひとつの『波』であり、『海』へと戻っていくことなのだと感じております」と語られました。
 長谷川先生は、「現代の社会では他の専門職との連携、地域での協働ということが大きなキーワードとなっています。それぞれの個々人がどのような死生観を培ってきているのかが、職種を越えて欠かせないことだと思います。地域の中で臨床仏教師の果たす役割は相当大きなものになっていくのではないかと感じております」と述べられました。

結びに、神仁上席研究員は「現在、臨床仏教師の数はスーパーヴァイザーもふくめ15名です。歩みは遅々たるものかもしれませんが、少しずつ、着実に活動の場を広げさせていただいております。仏様からいただいたつながりに感謝し、今後も歩んでまいります」 と述べました。

一人ひとりの「いのち」に寄り添う臨床仏教師。つながりの輪が幾重にも広がっていくことを祈るばかりです。



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