お知らせ
2024.04.26
「加盟教団教化部門代表者会議」を開催しました
▼▼コロナ禍明け初の会議開催
4月25日、全青協では「加盟教団教化部門代表者会議」を開催いたしました。コロナ禍による休止期間を経て、実に4年ぶりとなった開催当日は、オンラインを併用して理事教団を中心に11教団の教化代表者等が集い、全青協の事業の柱でもある青少幼年の教化と支援について、そして少子高齢化や寺院の檀家離れ、「不活動法人」への対策など、現代の諸相に即した教化についての検討がなされました。
第10回となる今回は、臨済宗妙心寺派に幹事教団をお務めいたました。野口善敬宗務総長のご挨拶によって始まり、前半は、同宗派で取り組んでいる「大衆禅堂」や「女性禅学林」「少年少女研修会」などの教化活動について、畠中寿浩教学部課長より発表がなされました。臨済宗妙心寺派では、毎年、教化全般のテーマを設けて活動を推進しています。
今年度のテーマは「おかげさま 学んで気づいて―法門無量誓願学―」。本山での行事はもちろん、各教区でもテーマに沿った行事が開催されています。
一方で、60年以上前から行われてきた一般向けの坐禅会「大衆禅堂」(現在月1回開催)や、およそ55年続く、子ども向けの宿泊研修会「少年少女研修会」など、時代を超えて行われてきた「教化の柱」ともいえる活動も大切に継続されています。「少年少女研修会」は、花園会員(檀信徒)の小学3年生~6年生の子どもたちを対象に、1泊2日で行われています。研修会を通じて、子どもたちが禅についてわかりやすい形で学んでもらえたらという願いから永年にわたり実施されており、お経の唱え方や坐禅の心構えを学び、修行体験をしています。
研修会では、禅の修行や体験のほかにも、陶芸体験や落語のワークショップ、オリジナル念珠作りやヨガ体験などの各種プログラムも毎年企画されており、普段の生活ではなかなか経験できない貴重な体験の機会を得ているようです。参加費は、昨年度は1泊3食込みで8000円。毎年、60名ほどが参加する人気の行事となっています。
「子どもたちが禅に触れる機会を大切にしたい」と、言葉に力がこもる畠中課長。子どもの頃にこの研修会に参加したことがあるという人が、大学生になって妙心寺を訪ねてきてくれて、とても嬉しかったというエピソードも明かされました。
また、全国的にも珍しい、女性のための禅体験コース「女性禅学林」についても紹介されました。これは岐阜市にある尼衆専門道場に1泊2日で滞在するもので、世俗の喧騒を離れて心静かな時間を取り戻し、自分自身をゆっくり見つめる時間が提供されています。
ほかにも、教化関連の活動として、能登半島地震の支援状況についても報告がなされました。現地では他宗派の寺院の協力を得たこともあり、畠中課長は協力に謝意を述べるとともに、超宗派で連携する必要性を語りました。
▼▼出家を後押しするプロジェクト
会議の後半では、宗門活性化推進局の久司宗浩顧問より、宗派をあげて取り組んでいる「第二の人生プロジェクト」と、不活動法人対策についての報告がなされました。「第二の人生プロジェクト」とは、定年後のシニアなどに「僧侶となって、世のため人のために活動しませんか」と、広く門戸をひらき、出家を後押しするプロジェクトです。2012年から始められました。多様な人材が参加することが宗門の活性化にもつながるということで、僧侶となり得る人材を外部から発掘し、住職が不在となっている寺院へ入寺してもらうことを目指しています。具体的な僧侶育成の数値目標などはあえて設けていないのですが、これまでに400件以上の問い合わせがあったといいます。
応募者は、個人面談に始まり、禅寺への体験入門などを行って得度します。出家した後には僧堂にて修行を積み、お試し期間などを経て入寺する流れとなります。
現在、出家得度した方は43名。そのうち10名の方が入寺して住職となっており、朝夕のお勤めや作務、傾聴活動などに励む日々を送っています。実際に「第二の人生プロジェクト」を経て岐阜県の寺院住職となった方は、地元にて「傾聴ボランティア」や「介護サービス相談員」等の活動を行っており、地域の方々の、生老病死にまつわる苦悩に寄り添う日々を送っているとのことです。
同プロジェクトに問い合わせる人の中には、僧侶として生計を立てたいと考える人も多いということですが、「あくまで経済的に自立している方を対象としている」と久司顧問は語ります。会社員などを定年まで勤め上げ、年金などの生活の糧があれば、第二の人生を純粋に信仰のため、世のため人のために使うことができます。そうして、これまでの社会人経験で培ってきたさまざまなスキルを活かして、地域の人の悩みに寄り添うことができるのです。
お寺は、宗派を問わず、現在そのほとんどが世襲の形を取っています。お寺に血縁関係のない人がいざ僧侶になろうと思っても、師僧を自力で探さねばならないなど道のりは困難です。同宗派のように宗門が出家希望者をサポートし、無住のお寺を紹介していくこの取り組みは、他宗派にとってもモデルケースとなることでしょう。
▼▼「不活動法人」への対応とは
次に、久司顧問は不活動法人(不活動宗教法人)について、臨済宗妙心寺派の現況を報告しました。臨済宗妙心寺派では、20年前に比べて寺院総数は70カ寺以上減少し、有住寺院が約200カ寺減ったという一方で、兼務寺院は約170カ寺増加していることが明かされました。2013年に、兼務寺院が1千カ寺を超えたことがきっかけとなり、取り組みの必要性がさらに増したといいます。
文化庁によると、不活動法人とは、「1年以上にわたって儀式行事など信者を教化育成することを主たる目的とする行為がないこと」「2年以上、礼拝施設が不存在であること」「1年以上にわたって代表役員(住職)が欠けていること」の、いずれかを満たす法人を指しています。一般的に宗教法人は、宗教活動で得た収入や礼拝施設には課税されないなど税の優遇措置が受けられ、一定額を超えなければ収支報告も不要なことから、反社会的組織などからマネーロンダリングに悪用されるケースが懸念されています。
久司顧問は、「不活動法人自体は不正行為の温床ではない」とする同宗派の見解を述べ、善意の代表役員が詐欺的口上にあって籠絡されたり、悪意のある代表役員が存在するケースがほとんどであることを明かしました。
そして、懸念される不正行為を防ぐには、宗派と寺院の関係性の強化と、単立化の阻止を念頭に置いたない法的手段の行使が必要でなはいかと述べました。
同宗派では、過疎地のお寺や檀信徒が少ないなど、今後の教化活動に不安があるお寺に対して、余力のあるうちに解散や合併を指導し、不活動法人化させないことを重視しているといいます。
檀信徒にとって、通っているお寺に住職がいなくなってしまったら、「これから仏事や自分たちの葬儀はどうなってしまうのか」と不安に駆られるに違いありません。こうした不安を払拭するためにも、同宗派では、檀信徒への説明を確実に行うよう指導し、建物の解体が困難で解散ができないお寺などにも、1件当たり300万円を上限とする解散補助金を2018年度からの宗派会計に計上しています。久司顧問は、「宗派が指導していくことに理解を得られるようにしたい」と、対策とそれに伴う課題を述べました。
幹事教団の発表の後には、出席教団の代表者によりそれぞれの取り組みが発表されました。全青協の神仁代表執行理事は、「僧侶の育成について申し上げれば、まずは仏心のい10人を育てればやがて100人となる。数を追って急くことは、僧侶の質の低下にもつながる。信心をもとに、若年層、年配者も、ともに支え合いながら活躍することのできる寺院、環境を皆でつくっていくことが大切ではないか」と総括しました。
同会議は、今後も教化活動の情報共有と活動プラン検討の場として開催を予定しています。