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世界をつなぐチャイルドライン・ネットワーク チャイルドライン世界大会開催
世界57カ国から
9月28日から10月1日にかけての4日間、オランダのアムステルダムでチャイルドライン世界大会が開催されました。世界各地のチャイルドライン関係者が一度に集うのは今回が初めてのことです。大会には、欧米やアジア、アフリカの57カ国から合計104人が参加しました。日本からは、チャイルドライン支援センターの星野さんと私の2名が出席しました。
また、チャイルドライン関係者のほかにも、ユニセフなどの国連関係機関や、オランダ政府の外務省や経済省、ITUという世界の電気通信会社の連合体などからも参加があり、それぞれの立場からの意見が融合され、とても充実した協議が持たれました。
今回の大会は、世界各地のチャイルドラインをネットワークし、子どもたちに対するサービスの充実と、地域的な広がりを目指して開催されました。また、その中心組織となるCHI(チャイルド・ヘルプライン・インターナショナル)を正式に発足させることも大きな目的の一つでした。
大会全体のコーディネートを務めたのは、アムステルダム在住のジェルー・ビリモリヤという若きインド女性です。彼女はインドのチャイルドラインの代表も務めており、八面六臂の大活躍でした。ジェルーさんのチャイルドラインに対する熱い思いと、人懐こいキャラクターがなければ、CHIの設立は不可能だったでしょうし、今回の世界大会も実現しなかったでしょう。彼女に心から敬意を表したいと思います。
子どもたちの権利を守るために
さて、大会は28日のレセプションから始まりました。司会を務めたのは大会スポンサーでもあるプラン・インターナショナルのマインデルト・ウィットヴレェットさん。彼は冒頭で、「チャイルドラインの使命は、すべての子どもたちが自らの権利を守ることができるようにサポートすることではないでしょうか」と語り、チャイルドラインの重要な理念を強調しました。
続いてゲストの国連子どもの権利委員会議長ヤープ・ドュークさんから、子どもをめぐる世界の状況についてのオープニング・スピーチがありました。「チャイルドラインを通じての子どもの権利の保護活動に期待をしています。とくに社会の中で虐げられている子どもたちが自分の権利を守ることができるよう願っています」と参加者に語りかけました。
そして、大会委員会のメンバーからCHIについて概説と大会のガイダンスがあり、その後は、さまざまな言語が飛び交う和気あいあいとした雰囲気の夕食会へと移りました。各国の民族衣装もとても美しく、まさしく世界大会ならではという空間がそこに広がっていました。
さまざまなチャイルドライン
本格的な協議は2日目の朝から始まりました。
まずは、午前中のセッションは、CHIの議長であるバロネス・バレリーさんをコーディネーターとして、各国の代表者の紹介から始まり、続いてCHIの活動目的、ヘルプラインとしての将来的な見通しなどについて、ユニセフの担当者をゲストスピーカーに迎えて話し合いました。
休憩をはさんでの第2セッションでは、アムステルダム大学のライテン教授の発題を受けて、10名ほどの小グループに分かれて各国の活動状況や現状での問題点などを話し合い合いました。
その内容をいくつか紹介したいと思います。
スイスでは、世界的なNGO団体であるセーブ・ザ・チルドレンが、チャイルドラインを運営しており、24時間対応で毎日電話を開設しています。昨年は9万本の電話を受けたそうです。財政面では政府が5%程度の運営費を拠出しているとのことでした。
オーストラリアでは、昨年だけで50万本の電話を受けており、電話のほかにEメールでの対応が7500、WEB上でのカウンセリングが7500件に上ることが紹介されました。
また、ロシアではなんと全国で400ヵ所のセンターがあり、無料で開設しているものから有料でカウンセリングをしているものまでさまざまなチャイルドラインがあると報告されました。
私たち日本組は、日本のチャイルドラインが国営ではなく、さまざまな市民団体により運営されていること。そして、オランダやイギリスなどに比べて歴史が浅く、ボランティアの力量形成や資金的な面でいろいろと苦労をしていることなどについてお話ししました。
このグループ討議の中で印象に残ったのは、各国のチャイルドラインの状況がそれぞれに異なっているということ。そして、日本では受け手と呼ばれている人たちが、諸外国ではカウンセラーと呼ばれることもあり、プロフェッショナルな扱いをされいるということでした。とくにアメリカなどでは、そのほとんどが、大学院で心理学か社会福祉学を専攻した人間であるとのこととを聞き、日本も少しでもそのようなレベルに近づけるよう努力をしていかなければいけないということを強く感じました。
また、討議をもとに行われたグループ発表の際に、会場から出た「チャイルドラインを広めるばかりではなく、深めていくことが大切」との意見に、日本の現状を顧みて私は深くうなずいたのでした。
夕方からは、会議の会場となったホテルに隣接するミュージアムに場所を移し、オランダの国会議員なども迎えて、チャイルドラインとしてのネットワーク結成が正式に確認され、併せて各国のチャイルドラインが作成した資料の展示会が行われました。各国に一つずつブースが提供され、個性豊なデザインのカードやポスターをはじめ、チャイルドラインの歴史を刻んできた報告書や教材が所狭しと展示されていました。
国を超えての協働
3日目には、CHIの将来的な展望や、子どもたちの声や思いをどのようにして行政や社会に対して繁栄させていくかについて議論しました。また、組織の運営、受け手の教育、アドヴォカシーといったテーマごとに分れてのワークショップも持たれました。
私自身は、「ヘルプラインを担う専門家とボランティアの育成」という分科会に参加しました。そこでは、まずアメリカでのボランティアの育成方法などが一つの例として上げられ、その事例をもとに各国の状況や問題点について話し合い、研修の共通課題について検討しました。その結果、次のような重要項目があげられました。
1)受け手自身の成長につがなること
2)子どもたちに対して心を開く姿勢を培うこと
3)知識の詰めこみではなく現場対応型であること
さらに夕方からは、世界の地域別に分れてのグループ討議が行われました。日本は、アジア太平洋地域の一員です。この地域は東アジアから中東、そして南半球のオーストラリアまでと広大な範囲に及びます。長年の実績があるオーストラリアやインドに加えて、これから開設予定のベトナム、タイ、モンゴル、そして中東のイランやヨルダンといった11カ国がそれぞれのチャイルドラインの現状と計画について語り合いました。ゲームを交えながらの楽しい討議となりました。
全般的に欧米主導の今回の会議で、このセッションだけは当然のことながらアジア系の人々が主体となった場となりました。これまでになく、なぜかアジアの諸国がとても身近に感じられた瞬間でした。その家族のような雰囲気に、会議詰めで少々疲れの出ていた私は心身ともに癒されたのです。
互いに助け合いながら、アジア太平洋地域のチャイルドラインがより一層発展していくことを願いました。
チャイルドラインの未来
そして、ついに4日目の最終日がやってきます。朝から夕刻までの会議の中で、CHIの組織構成、アクションプラン、大会宣言などがまとめられました。
組織構成に関する討議の中で、日本はアジア太平洋地域を代表するCHIの理事メンバーに推薦されました。来年には、日本が中心となって地域の大会を開催することになるかもしれません。どうぞ楽しみにしていてください。
今回の会議でまとめれれたCHIのアクションプランを、以下一部をご紹介しておきます。
ネットワーク作り | 各地域におけるネットワーク作りに関して行動計画を作成する。世界のチャイルド・ヘルプラインについてのリストを作成する。インターネットを使った会議の実現。 |
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ガイドラインの作成 | プロジェクトチームが中心となって、チャイルド・ヘルプラインの最低限の基準作りを行う。 |
データベースの作成 | 子どもたちの声を社会に反映させるため、電話の内容などについて、世界的規模でののデータベース作成を行う。 |
会議中、ある人が「各国のチャイルドラインの状況や運営方法はさまざまでしょう。しかし、子どもの声を一生懸命に聴くという点ではみな同じです」と言いました。その言葉が、今でも私の中に強く残っています。「子どもの声を一生懸命に聴く」というこの一点を大切にしながら、世界のチャイルドラインは新たなステージへ向かって進んでいくのでしょう。