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家庭・暮らし
男の子がわからない...? ハッピーな親子関係のために
「男の子がわからない!」という声を、最近お母さんたちからよく聞きます。書店に行ってみると、「男の子の育て方」といった本がズラリ。「男の子本」が8割に対して「女の子本」はわずか2割、という印象でしょうか。家庭で子育てを担うことが多いお母さんにとって、異性である男の子の行動は「???」の連続なのかもしれません。
最近はお母さん自身の世代もきょうだいが少ないので、もし女きょうだいの中で育ったとしたら、男の子がますます未知の生き物に見えてくるでしょう。
「男の子はなんで注意しても言うことを聞いてくれないの?」「どうやって叱ったらわかってもらえるの?」と思っている方に、そのコツを少しお伝えいたしましょう。
◆摩訶不思議な男の子の生態
女性であるお母さんからすると、無邪気で単純、愛情表現もストレートな男の子は、小さな恋人と言えるくらいに可愛いもの。でも、「水たまりを見つけるとなぜ、助走までつけて両足で飛び込まなくてはいられないの?」「おしっこの最中なのに、声をかけたらそのまま横を向くのだけはやめてほしい......」といった、微笑ましいような、でもお母さんの手間とイライラを増やすようなエピソードには事欠きません。
そもそも、男の子の特徴には衝動性が強いことが挙げられます。幼い頃にはちょっと目を離したすきに、とんでもない場所まで行ってしまっていたなど、よくあることですよね。本人も、身体が勝手に反応してしまったとしか、説明できないのではないでしょうか。
衝動性を抑えることなどできないので、特効薬はありません。お母さんは息子がそういう生き物だと心得て、一緒に歩く時には手をつなぎ、車道側は歩かせないなど、最低限の安全を確保することに努めましょう。
また、「息子が乱暴で困っている」という悩みもよく聞きます。すぐに物を投げる、気に入らないことがあると叩こうとする......などです。
すぐに厳しく注意したくなるところですが、男の子がこうした行動に出やすいのには理由があって、一つには、脳の構造上、自分の思いを言葉にすることが比較的苦手であるようなのです。それで、手っ取り早く自分の感情を伝えるのに、破壊や暴力といった方法を使ってしまいやすいのですね。
これには、「投げないで! でも、イヤだったんだよね。今度はお口で言ってね。そのほうがわかるから」と、辛抱強く伝えてみましょう。頭ごなしに怒るよりも効果があることでしょう。
また、何らかのフラストレーションがそうした暴力的な行為につながっていることも考えられます。「お母さん、最近弟の味方ばっかり」など、ただ、寂しいだけなのかもしれません。そんなときには、こまめにハグして愛情を伝え、話をゆっくり聴いてあげるのもよいでしょう。これだけでびっくりするほど穏やかになることがあります。
◆叱るときは簡潔に!
毎日〝やらかして〟ばかりの男の子たち。お母さんがよく言ってしまうフレーズに、「何回言わせたらわかるの!」「昨日も言ったでしょ!」というのがあります。しかしこれは、特に男の子にとっては、まったくナンセンスです。
そもそも、お母さんが考えているような「過去」や「未来」は男の子の辞書には存在しません。男の子は、今、この瞬間だけを生きているのです。「わかった?」「うん!(何だっけ? ま、いいか)」......というのが関の山でしょう。
また、お母さんがよくやってしまうのが、気になることがつぎつぎと目について、叱り続けてしまう、というパターンです。「何度言ったらわかるの! 忘れ物ばっかりして。また先生に怒られるでしょう。そういえば、昨日もコップを洗っておくから出しなさいって言ったのにまだ出してないし。そうだ、あのプリントはどうなったの? 早く渡しなさいって言ったでしょ!」......など、経験はありませんか? しかし、男の子はここまで内容を羅列されたら到底、脳の忍耐力がついていきません。覚えているのは最後の「プリント」という単語くらいでしょうか。
注意するときには、なるべく簡潔にわかりやすく、が鉄則です。最近の研究で、女性の脳は男性に比べてより左右の脳の連携が良いことがわかってきました。一旦話し出すと(不快な記憶に関しては特に)、そういえばあのときも、こんなこともあったと、具体的な話が次々に出てくるのはそのためです。
対して男性の脳は、一つのことに特化するのが得意なようです。息子たちが好きなこと(ゲーム?)にかけるあの素晴らしい集中力は、しかしお小言を受ける場面ではまったく効果をなしません。一つのことを確実に注意した方が、男の子には響きます。お母さんはつい、自分と同じように理解できるだろうと思いがちですが、そうではないことを心得ましょう。
また、まじめなお母さんに多いのが、たくさんの決まり事や約束事で子どもを縛ってしまうことです。ルールが多ければ多いほど、叱る機会も増えてしまいます。「違う装置」である男の子を育てるには、ある程度のあきらめも肝心です。その代わり、これだけは守らせたい、という線引きをはっきり持つことが大切です。たとえば、家庭内でこんな内容のルールを設けてはどうでしょうか。
「他人の身体やこころを傷つけることはしない」「弱い者いじめをしない」「嘘をつかない」「ありがとうは忘れない」など......。そして「普段はあまり叱らないけど、これだけは守れなかったらすっごく叱るからね」と、あらかじめ子どもに伝えておくのはどうでしょう。もちろん、普段からむやみに叱らないという約束は、この場合守らなければなりません。ここまで言っておけば、子どもも親も、少しはこころ穏やかに過ごすことができるのではないでしょうか。
◆反抗期の男の子
小学生くらいまでの男の子の〝やらかし〟は可愛いものです。でも、お母さんたちが一番心配に思っているのは、反抗期を迎える思春期前後の接し方ではないでしょうか。少し前まではあんなにお母さん、お母さん、とくっついてきてくれたのに、今や「うるさいなあ」と「別に」の二言しか会話がないなんて、うちの子はどうしちゃったのかと、途方に暮れるお母さんもおられることでしょう。
でも、こうした反抗期の反応は、極めて健康なことです。これまで親の価値観の中、親の庇護(ひ ご)の下で過ごしてきましたが、一人の人格として精神的な自立をはかろうとする大切な時期なのです。これまでとはあまりにもかけ離れた息子の態度にショックを受けて、一層、干渉を強めようとする親もいますが、これは逆効果です。
心理学用語にパーソナル・スペースというものがあります。その人が守りたい個人的領域(空間)という意味ですが、思春期の子どもたちはまさにこの「こころのパーソナル・スペース」を築こうとしている真っ最中。「余計なことには口出ししないでほしい。でも、見守っていてほしい」というのが、彼らの本音です。
時々、無意識に「自分の子どもだから何を言っても許される」と思っている親御さんがいますが、それでは、子どもの激しい抵抗にあうのは必至です。過度な干渉は、喜ぶべき子どもの自立を妨げるものと、思春期の子どもをもつ親御さんには腹をくくっていただくしかありません。「子どもの反抗期は、ある意味、親次第」なのです。
◆干渉はほどほどに
こうして考えていくと、思春期の男の子にとって最も負担になるのが、「心配性で世話焼きのお母さん」です。わが子が日中、学校でどのように過ごしているのかが気になって仕方がないのでしょう。「今日、どうだった? 部活うまくいった? 疲れてるの?」などと質問攻めにしようとします。
しかし、今の子どもたちは朝から学校で授業を受け、部活動に汗を流し、場合によっては塾にも行ってとても忙しい一日を過ごしているのです。特に男の子の脳は、おしゃべりをしながらリラックスしたり、考えをまとめたりといったようにはできていません。一日の出来事を一人静かに振り返る時間も必要なのです。
また、察することの天才であるお母さんは、先回って子どものやることに手出し、口出しをしようとしがちです。お母さんからすれば親切以外の何物でもないのですが、プライドの高い男の子にとっては気分が悪いもの。「うるさいなあ、いまやろうとしていたんだから放っておいてくれよ」ということになります。そのうち、返事すら返ってこなくなるかもしれません。
お母さんが何かを言いたくなったら、本当にその一言が必要なのか、一呼吸置くクセをつけることを心がけてほしいものです。女性にとっては、放っておく、おかれることは愛情の薄い行為に感じられるかもしれませんが、男の子にとっては結構心地よい時間であったりします。そのことを知っておくだけでも、大分、関係性が変わってくるはずです。
逆に、息子からいつも素っ気ない対応をされて、本当に大切な話もできない! とお嘆きのお母さんは、「大切な話があるから、どこかで時間くれないかな?」と、折り入ってアポイントをとるのがよいでしょう。親子だと思うとなんだか水くさい感じですが、つい「息子のパーソナル・スペース」に踏み込みたくなってしまうお母さんには、特にオススメです。反抗期の対応に関しては、女の子も同様です。頭ごなしではなく、一人の人格として扱ってもらえたということが後々の自信につながることでしょう。
◆友人関係の悩み
また、思春期前後になれば、友だちとの関係性も一層難しいものになってきます。特に女の子同士の関係のデリケートさは、男の子のそれとは比べものにならないほどです。クラスの中で一度グループができあがってしまえば、昼食から登下校、放課後のつきあいまでグループ内で行うことが鉄則となってきます。
しかも今はLINEなどのSNSで24時間つながっているわけですから、日々、友人関係に神経をすり減らす子どもが多いのもうなずけます。
たとえ、いじめに発展しなくても、何か悩んでいるような様子が見られるようでしたら、さりげなく声をかけてみてもよいでしょう。子どもにもプライドがあります。その場で話してくれなくても、「いつでも聴くからね」とつかず離れず見守る姿勢が、子どもにとっては安心感をもたらします。何か意見を求められた時には、「お母さんならこうするかな」と、正直な気持ちを答えても構いません。
ここでも、思春期・反抗期の子どもに接する際に大切なことは客観性です。大事な子どものことだからと冷静さを失わず、おおらかに見守っていきましょう。
◆子育てのゴールとは?
長いようであっという間に終わってしまう子育ての期間。どんなに寂しくても、いつか子どもは必ず親の手元を離れていきます。自分なりの価値観を確立させて、人生をしっかりと歩んでくれることこそが、本来の親の望みであり、子育てのゴールと言えるのではないでしょうか。
一般的に、いつも子どものことを最優先させてきたような〝よいお母さん〟ほど、いつまでも子どもに寄り添う人生を歩みたいと望みがちです。子どものことはいくつになっても心配なのが親ですが、子どもが拙(つたな)いながらも自分の人生を歩み始めたならば、その後は親から一個人に戻り、自身の人生を精一杯生きて下さい。
親にとって子どもの幸せが第一であるように、子どもにとっても、幸せに生きる親を見ることが何よりの喜びなのですから。(吉)