東日本大震災支援
2012.09.18
東日本大震災に関わる子どもの課題を知るセミナー開催報告 ―協働のあり方を学ぶ―
ぴっぱら2012年9-10月号掲載
7月20日、東京都内にて連続セミナー「子ども支援の現状を知る!語る!企業のためのCSRセミナー」が開かれました。CSRとは、企業が本業や公益的な活動を通じ、社会に与える影響に責任を持つ組織づくりを行うことを指すものです。日本では「企業の社会貢献」とも解釈され、近年では各企業で積極的に推進されてきています。
主催のNPO法人キッズドアは2007年に発足した団体で、「すべての子どもが将来への夢や希望を持てる社会の実現」にむけて、国内の子ども支援を行っています。
今回のセミナーでは、東日本大震災に際して企業やNPOが行った活動事例から、被災地の子どもたちに今後必要な支援のあり方について、参加者を交えてともに検討しました。
▽支援活動報告と子どもたちの抱える課題
はじめに、講師の坪井亜紀子氏(日興アセットマネジメント株式会社管理部長兼CSR室長)より、企業のCSRとして行った震災ボランティア活動の取り組みが紹介されました。日興アセットマネジメントでは、被災地の小学生を対象に「私たちが住みたい未来の町」をブロックで作るイベントの開催や、中学生への学習支援などを実施しています。
また同社は、津波で全壊した南三陸町の小学校に、震災で失われたカイコを飼育する小屋を「ふるさと学習室」として寄贈しました。そこでは、小学校が地域の大人と一緒に25年以上に渡り世代を超えて受け継いできた、約5000頭の蚕の飼育を行います。作った繭は児童が図工の時間などに加工し、交通安全週間に地域で配ります。
こうした実例を挙げながら、地域に学びとコミュニケーションの場を再生するなど、被災地のニーズに沿った活動をすることの重要性を指摘しました。
一方、片貝英行氏(NPO法人キッズドア事務局長)からは、支援事業を通じて見えてきた被災地の子どもたちが抱える課題が挙げられました。
避難所や仮設住宅などへの数度の転居を余儀なくされた結果、「避難先の学校の学習進度の違いから子どもたちに学び漏れが発生する」「不安定な精神状態で落ち着いて授業を受けられない・授業が理解できない」「親の失業や会社の倒産による不登校が懸念されたり、ライフキャリアが描きにくくなる」「スクールバスでの登下校と、部活や放課後の遊び場の制限からくる運動不足」など、いずれも子どもたちの将来を左右する深刻な問題ばかりが存在しています。
▽持続可能な支援へ―協働のあり方を模索
震災から1年半が経過するなか、「もう震災は過去のこと」という世間の風潮があり、被災地では子どもたちに対する継続的な支援を行うことへの困難が生じています。この現状をふまえ、後半のトークセッションでは、子どもたちの成長に寄り添う支援を模索するために、企業とNPOがどのように協働していくべきかが言及されました。
坪井氏は、現地のニーズをとらえた支援事業を行うためには、企業だけでは限界があったことを振り返ります。支援先の学校との深い信頼関係を築いたり、慣れないボランティア活動に不安を抱える社員に向けた事前研修において、現地の様子を把握しているNPOや公益活動団体の力を実感したそうです。またキッズドアからも、資金面はもちろん、被災地の声に耳を傾け、復興への道程を現地の方と歩調を合わせて進む、同社のような企業と協働できたことが、被災地の子どもたちの笑顔につながったとの報告がありました。
このような連携のあり方は、震災支援活動のみならず、お寺が公益的な活動を行っていく際にも大きな示唆となるものです。地域に密着しているお寺が企業やNPOが行う活動に眼差しを向けることで、協働の輪が一段と大きくなり、豊かな市民社会をともに築く可能性が広がっていくことでしょう。(山)