東日本大震災支援

2011.04.24

東日本大震災被災地の現在

4月4日から11日にかけて、福島、宮城、岩手3県の避難所などを巡り、支援物資の配布、プチ子ども会の開催、現状のニーズの聞き取りを行ってきました。7日には、仙台で震度6弱の強い余震にも遭遇。これにより、さまざまな地域で一時は復旧していたライフラインが再び寸断されてしまいました。ご承知のように、現地では今でも小さな余震が続いています。

私が訪問した避難所では、現在、最低限の生活物資がほぼ揃ってきていました。賞味期限が過ぎ、廃棄されつつある食べ物が出てきている一方で、温かい食べ物を口にする機会は相変わらず制限されています。一人一畳ほどの生活空間で、ほとんどの人が辛抱強く耐えている姿には頭が下がります。

とはいえ、ほとんどの方々が、将来に対する大きな不安を抱えていらっしゃいます。特に住居や仕事に関する心配は、大きなストレスにもつながっています。中には、夜フラッシュバックによってか、「ううっ、ううっ」とうめき声を上げている方もいます。トラウマの固定化が懸念されるところです。

子どもたちも大人を気遣ってか、すこぶる行儀良く、おとなしくするよう努めています。しかし、大声を出したり走り回りたい気持ちを抑えながらの日々の生活は、子どもたちにとって、とても不健康な状態のように見受けられました。私が声をかけて話を始めると、最初は無口だった子どもたちも次第に饒舌になり、今の思いや感情を素直に表現してくれるようになります。やがては、「ねえ、ねえ、聞いて」といった具合で、我先にと話しかけようとしてくれます。

しかし、子どもたちの話題は、まだ地震や津波に及ぶことはありません。震災時の辛い思いや恐怖に向き合うまでには、しばらく時間が必要なのでしょう。子どもたちに対する早期のこころのケアが必要に思われました。

今回の震災では、多数の寺院が避難所となり、住職をはじめお寺の関係者が必死になって被災者のケアに取り組んでいます。石巻のあるお寺では、150人程の方々が避難をしていました

ご住職は、「こんな時こそお寺が地域の方々の力にならなければ」と熱く思いを語ってくれましたが、その表情には震災当日以来の疲れが色濃く表れています。このお寺には、乳幼児から高校生まで、直後には25名の子どもたちが避難していました。大人の大きな靴に子どもたちの靴が踏みつけにされるのを見ていて、「今だからこそ、大人にも子どもにも『履き物をそろえると心がそろう』という教えを伝えなければいけない」と思ったそうです。以来、このお寺では、玄関の履き物を整頓することを、第一の努力目標にしています。

また、気仙沼のあるお寺では、隣接する保育園の保育士さんたちが中心になって、被災者のケアを行っていました。食事の炊き出しや、全国から送り届けられてくる物資の整理などを、数名のスタッフで切り盛りしています。自分自身が被災者の一人でありながらも、家や家族を失った方々70名ほどのお世話を坦々と続けています。スタッフのリーダー格である保育士さんは、「宗教者の方には、ぜひ被災した方のこころの内を聴いていただきたいと思います」と語ってくれました。物資の支援も必要ですが、精神面での支援が宗教者にはより求められているということでしょう。その思いに私たちがどのように応えられるのかが、今まさに問われています。

ご承知のように、今回の震災によって、被災地の方々は地震と津波に加えて、原発の事故という三重の苦難に直面しています。被災した地域もすこぶる広く、そのため、避難所によって求められているニーズもさまざまです。

福島県伊達の避難所では、見えない放射能に対する底知れぬ恐怖感を、すべての人が抱いているようでした。今にも切れてしまいそうな、張り詰めた糸のようなこころに接すると、こちらの胸も締め付けられ、呼吸が出来ないほどの苦しさを覚えます。「開き直るしかないよ」という被災者の声の内に、本当には開き直ることのできない苦しさ、やるせなさ、もどかしさを感じ取りました。そのような被災地の現状を踏まえて、今、私たちが出来ることをいくつか挙げておきたいと思います。

●中長期にわたる視点で支援活動を考える
●被災した方々を物心両面で支える
●支援活動をしている方々を物心両面で支えていく
●自分自身のこころの安寧を大切にする

なお、直近で被災地に入られる方には、次のことをお願いしたいと思います。

●温かい食を提供する炊き出し
●日持ちのするくだもの類の差し入れ
●厚手のゴム手袋や長靴など作業用品の差し入れ
●お風呂に入れる機会の提供
●行茶のような自然な形でのメンタルケア
●被災地で活動する人たちの休息の確保
●子どもたちの話をじっくり聴き一緒に遊ぶこと

被災地に入られる方は、どうぞ、繋がりのある現地の寺院、団体、ボランティアセンター、災害対策本部などと、密に連絡を取りながら現地入りをして下さい。日々刻々と被災地のニーズは変わってきています。さまざまな形での活きた支援をお願いします。

(全青協 神 仁)

東日本大震災支援活動 被災地の子どもたち
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