東日本大震災支援
2011.06.08
避難所の子どもたちに必要な教育支援
震災後、子どもたちは随分やりたいことができなくなったことでしょう。元気に走り回っていた体育館は避難所になり、好きなお洋服も着られない、おもちゃもゲームもない。
子どもは我慢を知らないのが当たり前で、そこが子どもらしく素直で可愛いところです。一方、避難所の子どもたちは、我慢が習慣になっているようでした。しばらく一緒に遊んだ女の子が「絵本送って」と私にこっそり耳打ちしてくれましたが、みんなの前では言えなかったのでしょう。また、チョコレートフォンデュを自分はあまり食べずに母親に持っていく子どもの姿もありました。
大人になる過程で「利己」を抑え我慢を覚えるのは大切なことです。しかし、まだ十分に自己も自我も芽生えない子どもたちが、自分のやりたいことや楽しみよりも「利他」の眼差しを抱いていることは、感慨深くも心配です。
普段は我慢ができる子を褒めがちですが、我慢ができることと我慢をしなければならないことは、違う話ではないかと思います。我慢ばかりしてきた子どもは、人と付き合うとき必要以上に他者の顔色をうかがったり、やりたいことよりもできることを探して過度に現実主義的な考え方になってしまうかもしれません。
このように書いておきながら、私自身反省したことがあります。歌のコンサートが始まったとき、ゆっくり聴いて欲しいとの思いから、フォンデュや風船ではしゃぐ子どもたちに「お姉さんのお歌聴きにいこうよ」と何度も促してしまったのです。直後にハッとしました。今、子どもたちはフォンデュや風船遊びをやりたいのに、それを制してしまったのは、子どもに我慢を強いる大人のエゴであったのです。
全身チョコレートだらけで笑顔の子どもたち。どなたもそれを止めも叱りもせず、にこやかに見つめていらっしゃいました。そのご様子からは、無邪気な子どもたちの限りない可能性を、みなさまで見守っている温かさが伝わってきました。
大変な状況の中だからこそ、子どもたちにはやりたいことをさせてあげる。今後もそのお手伝いを影ながらにさせていただければと思います。
(山下千朝)