東日本大震災支援
2011.08.02~2011.08.03
福島の子どもたちに笑顔を!「会津で遊ぼう!」
全青協は、曹洞宗福島県青年会との共催で、8月2~3日にかけてサマースクール「会津で遊ぼう!」を開催しました。
参加者は、福島県の海沿いの町に住む小学生たちです。東日本大震災に伴う原子力発電所の事故以来、屋外で遊ぶことを制限されている子どもたちを招待し、力いっぱい遊んでもらおうという企画です。
参加した子どもたちは2歳から小学6年生までの計64名。集合の際は緊張を隠せないといった表情の子もいましたが、バスの中での自己紹介やゲームが進むうちにどの子も笑顔になり、スタッフ一同安心して接することができました。
大自然の中、いきいきと
1泊2日の行程は、福島県会津若松市を中心に行われました。初日は、西会津町にある緑豊かな「さゆり公園」に立ち寄り、バーベキュー、屋外でのレクリエーション、プールでの水遊びもしくはアスレチックというプログラムを行いました。
天候にも恵まれ、青空に遠く入道雲が浮かぶ大自然の中で、子どもたちはいきいきと走り回り、汗を流していました。
夜は「福島県会津自然の家」に宿泊します。決まり事の多い公共施設のため、戸惑うこともあろうかと予想していましたが、職員の説明を聞き子どもたち自身でベッドメイクをする中で、約束事を守り、助けあいながらの宿泊に自然と慣れてゆく様子が見て取れました。
開会式では仏旗を前にして献花が行われ、声を合わせて歌う『ささぐみあかし』が響き渡る中、2日間の集団生活を通じての達成目標を誓い、それぞれのふるさとに思いを寄せて白い花が供えられました。続く夕食の際には、みんなで「五観の偈」をおとなえしました。子どもたちにも分かりやすく現代語訳された5つの偈文を読みあげ、「食べ物を口にすることは命をいただくこと、ありがたくいただきます」との思いで手を合わせました。
夕食後に行われたキャンプファイヤーでは中央の炎を囲み、フォークダンスやレクリエーションを行いました。最後にお坊さんによるサプライズとして、子どもたちに大人気のドラマ「マルモのおきて」の主題歌に合わせた踊りが披露されると、テンションは最高潮。子どもたちも加わり大いに盛り上がりました。
燃え上がる火の粉の先に広がる星空に気付いた子どもたちの笑顔が明るく照らされ、賑やかであたたかな時間となりました。
就寝時は、慣れない場所で興奮冷めやらぬままに二段ベッドで眠ることもあり、なかなか寝付けない様子も見られましたが、昼間の疲れも手伝って、子どもたちはしばらく経つうち穏やかな寝息をたてていました。
歴史と伝統に触れた一日
ラジオ体操から始まった2日目。朝食時「五観の偈」を慣れた様子で読み上げる姿に、子どもたちの適応力を心強く感じました。班ごとの行動にも慣れ、自然の家周辺の樹木を調べて歩くオリエンテーリングでは、急な山道だったものの、元気に登り降りしながら自然の中を散策しました。
自然の家を出発した後は、特に楽しみにしている子も多かった鶴ヶ城の見学に向かいます。
火縄銃や日本刀の重さを実感する展示や、白虎隊にまつわる資料を見ながら天守閣に登ると、四方を緑の山に囲まれた美しい会津若松が一望でき、汗ばむ肌に吹き抜ける風を心地よく感じながら景色を楽しむことができました。
また、城内売店ではお小遣いでお土産を買う時間が設けられ、予算内で家族や自分に思いおもいの品を選ぶ、真剣なまなざしが印象的でした。
次に訪れた会津藩校日新館は、幕末に青少年教育機関だった場所です。白虎隊も育んだという学び舎の厳しい規則「什の掟」の「ならぬことはならぬものです」という言葉の意味が分かるや否や、「厳しい! すごい!!」と声を上げる子も多く、100年以上前に同じ地に立った同年代の少年たちの真摯な学びの姿勢に、驚きを隠せない様子でした。
ここでは、郷土料理のわっぱ御膳をお腹いっぱいいただいた後、希望別に弓道と絵付けの体験を行いました。絵付けは、どのような体勢からも起き上がることから地元では縁起物として親しまれている「起き上がりこぼし」に、絵具で顔や着物などを描くもので、皆模様を真剣に考えながら慎重に筆を走らせていました。
しめくくりは、全員そろっての坐禅です。それまで気さくに接していた僧侶スタッフが衣帯を改めて道場に現れると、一瞬にして子どもたちの間に厳粛な空気が流れました。足の組み方、手の置き方などの指導の後、静かな空間の中で集中して座った時間は短くも長くも感じられ、姿勢を解いた後の子どもたちには達成感に輝いた表情が浮かんでいました。
閉講式ではスタッフから、地元では屋外で自由に遊べなくなってしまっている状況下の子どもたちを激励する言葉が伝えられ、修了証の授与をもってすべてのスケジュールが終了しました。
子どもたちの現在
楽しいキャンプ生活とはいえ、子どもたちにとって、震災後に親元を離れる不安は大きかったことでしょう。会話の中で地震や津波の話を聞くこともあり、心の揺れ動きは少しも収まっていないことを実感しました。また、小学校の転入や転出については、さびしく、複雑に思う気持ちも聞かれ、こうして学校を離れた新しい仲間と思い切り楽しめたことをよかったと感じている様子でした。
今後も、つらい思いから少しの時間でも離れることや、子どもたちや保護者が安心して屋外を楽しめる機会を作ることは大変重要だと感じました。
2日間という短い期間でしたが、元気で礼儀正しい子どもたちに接して、どうかこの子たちの未来が楽しく憂いなくあるように、と祈るような気持ちで別れを告げました。(島田絵加)