正力松太郎賞

2024.10.01

第48回正力松太郎賞表彰式を開催しました

 全青協は、9月26日、東京・港区の曹洞宗檀信徒会館にて「第48回正力松太郎賞」の選考報告会および表彰式・祝賀会を開催しました。

 当日は、本賞を受賞した「青少年修養道場」(日蓮宗・滋賀県守山市)の代表、藤岡暎邦さんをはじめ、奨励賞を受賞した楠 恭信さん(曹洞宗長照寺住職・福島県耶麻郡猪苗代町)、「子ども寺子屋」(浄土宗・鳥取県米子市)の代表、伊藤信道さん、「三重県曹洞宗青年会和太鼓集団 」(曹洞宗・三重県津市)の代表、花井正道さんらが登壇し、理事長より賞状と副賞が授与されました。

▼▼ 本賞受賞者の活動とは
 表彰式に先がけて行われた選考報告会では、各受賞者よりこれまでの活動について映像などを交えながら紹介がなされました。
 「本像寺青少年修養道場」では、1974年から毎年、夏休みに小学3年生から中学3年生までを対象にした2泊3日の合宿道場を開催しています。道場では、「合掌の心を育てよう」というテーマのもと、おつとめや静座、(お題目を唱える修行)などが行われています。
 報告会では、長きにわたる道場の歴史と、今年8月に開催されたばかりの道場の様子が紹介されました。今年はサブテーマの「ありがとう」にちなみ、「ありがとうの花束」という企画が行われていました。
 子どもたちは、「ありがとう」と感じたことを花の形の紙に記入し、皆で一つのボードに貼り付けていきます。最終日には、感謝の気持ちがたくさん詰まった、色とりどりの花束のボードが完成しました。
 この企画は、普段、意識せずに過ごしている日常が、実はたくさんの「おかげさま」で成り立っているということに気づいてほしいという願いから行われたものです。「ありがとうって、言われた方もだけど言った方も嬉しくなる」「魔法の言葉だなあ」―。そんな感想が子どもたちから聞こえてきたといいます。
 昨年、道場は開設50周年を迎えました。かつては、子どもたちと指導者あわせて参加者が100人を超える年もあったといいます。コロナ禍の数年も、指導者のみを対象とした日帰りのミニ道場を開設し、子どもたちとはYouTubeを通じてつながり合いました。子どものみならず、高校生や大学生の指導者にとっても、得がたい学びの場となっているのです。
 これまでに道場を巣立った子どもたちは延べ1900人を超え、指導者を含めると2700人以上となります。地域社会に開かれたお寺づくりを目指した藤岡さんの熱意は、多くのご縁をつなぎ、子どもたちに仏教の大切なみ教えの種をまいてきました。本像寺青少年修養道場は、次の50年を目指し、教化のたすきをつないでいくことでしょう。

▼▼ 奨励賞・一氏二団体の活動
 次に、奨励賞を受賞した「迎接院子ども寺子屋」の取り組みについて紹介がなされました。迎接院では、戦中から託児所を開設し、その後も子ども会活動やお年寄りのためのミニ・デイサービス「寺子屋サロン」を行うなど、お寺を開放して地域に貢献する活動を大切にしてきました。
 2005年からスタートした子ども寺子屋では、夏休みや春休み期間中の平日の毎朝1時間、子どもたちを招き入れ、学習の場を提供しています。元教員の伊藤さんと奥様の紀子さんが指導役となり、個々の勉強をサポートするほか、さまざまなイベントを企画して子どもたちの心の成長も支援しています。
 今年の夏休みには、48名の子どもたちの元気な声がお寺に響き渡りました。期間中には、「夕日の集い」や「プチ修行」が実施されたほか、寺子屋と高齢者のサロンの交流行事として「寺子屋大茶会」も開催されました。
 子どもたちはお作法を教わりながらお抹茶をたて、苦さに顔をしかめつつも、一生懸命に飲み干していました。
 子ども寺子屋では、子どもたちに、正解や成功を積み上げることを目指すのではなく、「失敗を含めて、自分の意志で取り組んだ結果を重ねていってほしい」と、かねて伝えているといいます。
 子どもたちを受け入れ続けて20年。これからも地域の子どもたちの拠り所となることが期待されます。
 同じく奨励賞を受賞した楠 恭信さんは、2015年、全青協が養成する第一期臨床仏教師として認定されています。
 「宗教者にしかできないケアがある」という想いから、医療や福祉の現場に自ら赴き、緩和ケア病棟での終末期ケアや神経難病患者の傾聴活動などに携わってきました。
 会場で楠さんは、患者だけではなく、看護師や介護士の方々へのケアの重要性についても言及しました。現場では打ち明けづらい生と死に関する対話を通じて、ケアに従事する方々自身の死生観を醸成することにも努めていると語りました。
 一方で、楠さんは青少年の育成活動にも力を入れており、2017年には芸術祭「ウォールアートフェスティバルふくしま㏌猪苗代」を立ち上げています。
 「学校×アート×地域」をテーマにしたこの芸術祭は、少子化と過疎化で学校の統廃合が相次ぎ、心が揺れる子どもたちに、アートを通じて寄り添おうというプロジェクトです。子どもたちは廃校をキャンパスとした壁画制作などに挑み、多くの人との交流を通じて学びを深め、郷土愛を育んでいます。
 地域社会を中心に据え、多彩な活動を行う楠さん。今後の活躍が期待される発表となりました。
 続いて、「三重県曹洞宗青年会和太鼓集団 」の活動紹介がなされました。同会は、2006年に地元の曹洞宗青年会の有志によって設立され、和太鼓奏者の服部さん指導の下、県内をはじめ各地の寺院や、「三重県曹洞宗青年会60周年記念大会」などの式典、仏教行事等で演奏を続けています。
 一月に起きた能登半島地震に際しては、輪島市で開かれた被災地支援のイベント「能登雪割草まつり」にも参加し、被災した方々に力強い演奏を届けました。
 活動を開始して以来、曹洞禅や仏教の未来を見つめ、言葉で伝えることが難しい悟りの世界を、和太鼓の音と所作で伝えることを目指しています。
報告会では、映像を通して代表曲「悟りの岸へ~雲のゆくまま 水の流るままに」が紹介され、メンバー一人ひとりがひた向きに打ち込む姿が映し出されました。
 また演奏には禅の世界観を取り入れており、山川草木や生類すべてにいのちが宿り、繋がり、支え合う、そんないのちの鼓動を伝えたいという想いが一打一打に込められていることが明かされました。
 「鼓司」の演奏はHPからご覧頂けます。
 https://sansousei.com/main_kusu/kusu/
 祝賀会では、受賞者による挨拶が行われました。各氏は受賞への謝意と協力者への感謝を語り、「地域におけるお寺の役割は何か、社会における僧侶の使命は何かと問い続けながら、これからも地域をより良くし、誰もが生きやすい世の中を目指して活動していきます」
 「活動を通じてみ仏の教えにふれていただき、仏教を少しでも身近に感じてもらえたらと思います」と、今後の抱負を語りました。
 生きていると、時に人生の岐路に立たされ、耐えがたいような苦しい思いやつらい思いを抱えることがあります。そんな時に寄る辺となり、思いの丈を打ち明ける場所があれば、人はどれだけ勇気づけられるでしょうか。
 子どもたちにとっても、「また来るね!」と笑顔で帰って来られる場所や、ともに喜び、ともに悲しんでくれる温かな存在があれば、安心して冒険の旅に出られることでしょう。こうした活動が、多くの仏教者にとって道しるべとなることを心から願っています。


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第48回 正力松太郎賞受賞者が決定いたしました !! 第49回正力松太郎賞
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