正力松太郎賞
2006.05.08
正力松太郎賞30周年・現代名僧墨蹟展40周年・ぴっぱら500号発行 記念式典開催!
月遅れの花祭りにあたる5月8日、東京ドームホテルにおいて、正力松太郎賞30周年、現代名僧墨蹟展40周年、ぴっぱら500号発行を記念した講演会および式典を開催いたしました。当日は、それまでの全青協の活動を支えてくださった関係者の方々など、およそ100名が全国各地からかけつけてくださいました。
記念講演会「寺子屋教育の未来」
記念式典に先がけて、午後3時半より松原泰道師(南無の会会長)の記念祝辞を始めとして、歴代正力賞受賞者による記念講演会を行いました。
松原師は、白寿とは感じさせないほどの力強いお声で、世代を超えて伝えたい願いとして全青協が掲げる6つの「ねがい」を挙げられました。
6つの「ねがい」
- 底ぬけに人を信ずる人間となろう
- よろこんで与える人間となろう
- いのちを大切にする人間となろう
- 考えぶかい人間となろう
- しめいに生きる人間となろう
- 規律あるしあわせをよろこぶ人間となろう
そして、自我の崩壊や隣人との関係の希薄を憂い、今一度その「ねがい」の再確認を呼びかけられました。
松原師の力強いお言葉をいただいた後、歴代の正力賞受賞者である喝破道場の野田大燈さん(第13回受賞者)・くだかけ生活舎の和田重良さん(第22回受賞者)・シャンティ国際ボランティア会の秦辰也さん(第8回受賞者)によるテーブルトークが行われました。
「寺子屋教育の未来(あす)」と題し、いわゆる学校教育といわれる公教育では人の心が育たない現代日本の現状を踏まえて、なぜ今、寺子屋教育が必要なのか。そして、今後の仏教界への期待について、御三方に提言していただきました。
野田さんは、平成に入ってから壊れやすいガラス細工のような青少年が増加したことを受けて、今まで寺が培ってきた修行の場としての異空間を、若者の癒しの場として提供するべきだと強く主張されておられました。さらに「寺の住職こそカウンセラーでなくてはならない」と、葬式や法事で収入を得ることで満足し、若い僧侶が育たない現代の寺のあり方に警鐘を鳴らされました。
和田さんは、ご自身の活動で得た体験をときおり冗談を交えながら話され、子どもたちを丸ごと受け入れ、学校や家庭から背負わされた重荷を下ろせる場の必要性を訴えられました。その中で、「評価することは子どもを腐らせてしまう。誰もがともに歩むことで一つのことを極める〝一心″を育てよう」と、一貫して学校外教育を重視される姿勢がとても印象的でした。
秦さんは、海外、主に東南アジアで活動されている立場上、よりグローバルな視点での提言をいただくことができました。しかし、東南アジアの難民救済の現場で、失われつつある心・経済・教育のよりどころといった寺の多機能性や寺を中心としたコミュニティー形成の必要性は、日本の現状にも通じるところが多く、「宗教問題は世界規模で深刻になってきている」と、日本を含めた東南アジアでの宗教の担う役割の大きさを再認識させられました。
さまざまな形で寺子屋教育を実践されている御三方の経験を通じた提言だからこそ、今、子どもたちが置かれている実状をより身近に感じられた講演会となりました。最後に、ふたたび松原師にご感想をいただき、今後の教育や仏教界のあり方に「ねがい」を託して終了いたしました。
記念式典
記念講演の後、会場を地下に移し、記念式典が行われました。式典会場では、全青協のここに至る歩みを少しでも知ってもらえるよう、ミニ墨蹟展を開催して、諸作品をその場で頒布するとともに、『ぴっぱら』の前身である『おしえの泉』創刊号から今まで発行された『ぴっぱら』全号を展示いたしました。席の合間を自由に行き来しながら、展示コーナーを見て回ったり、列席された方々の談笑される姿が数多く見られ、式典も終始和やかな雰囲気の中、進んでゆきました。
斎藤事務総長の開会挨拶に続いて、「第30回正力松太郎賞」の表彰式では、正力賞選考委員である渡邊寶陽さんの選考報告から始まり、正力賞本賞を受賞された三輪照峰さん、了見寺日曜学校代表の井口文雄さんに表彰状が授与されました。また、5年ごとに設けられる奨励賞の表彰も同時に行われ、いつにも増して賑やかで盛大な表彰式となりました。
続いて、今年40周年を迎える墨蹟展に多大なる貢献をいただいた各宗派管長や大本山貫首・著名文化人を代表して、岡本永司師(真言宗豊山派大本山護国寺貫首)に感謝状が贈られました。
乾杯の後、第30回正力賞受賞者から一言ずつお言葉をいただきました。
主にハンセン病患者への理解と差別、人権回復に努められた三輪照峰さんは、「ハンセン病患者の人権回復によって、私たちの人権が支えられていることを知って欲しい」と訴え、歩ける限りは海外支援のため、現地に赴きたいと意欲的に話されていました。
また、了見寺日曜学校で、50年にわたり、児童の教化指導をされてきた井口文雄さんは、教化活動に必要なことについて、「拝むこころ」と「地域の助け合い」を挙げられ、これらを継続して培う必要性を訴えられました。
(第30回正力松太郎賞受賞者の詳しいご紹介はこちらから)
正力賞受賞者のお二方による挨拶の後、普段あまり聴く機会のないインド音楽に耳を傾けました。シタールの奏でる神秘的な世界に誘われながら、式典閉会の運びとなりました。
最後になりましたが、これまでの全青協の活動および今回の記念講演会ならびに式典にご理解、ご協力くださいました多くの方々、そしてご列席いただきました皆様方に深く御礼申し上げます。