シンポジウム・講座
2009.07.07
協働コーディネーター養成講座―お寺と地域をつなぐコーディネート能力を磨く!
2009年7月7日・8日に東京港区の東京グランドホテルにて「協働コーディネーター養成講座―お寺と地域をつなぐコーディネート力を磨く!」という、2日間の連続講座を開催いたしました。
講師は、全青協主幹の神仁ほか、ゲスト講師として世古一穂氏(特定非営利活動法人NPO研修・情報センター代表)にお願いいたしました。
世古氏は、「協働コーディネーター」という新しい「職能」を提唱し、独自の研修プログラムを開発、人材養成にも力を入れています。「行政やNPOをはじめ、さまざまな課題解決のために『協働』するということが流行しているが、一方が下請け化するなどの新たな問題も生じてきている。協働を行う者同士が、お互いの守備範囲と能力に応じた対等なパートナーシップを結んで希望を実現させることが大切。そのためには、人々のつぶやきを形にして、思いを仕組みにすることの出来る新しいリーダーシップが不可欠」と提唱しているのです。
今回の講座では、この研修プログラムを寺院関係者向けに応用、参加体験型のワークショップを通じて、コーディネート能力の向上を目指しました。
参加者は、全国各地から24人の方が集まりました。
はじめに、互いの緊張をほぐすためのアイスブレークでコミュニケーション術を体験。順番に名前と参加動機を語っていきました。「お寺が地域に貢献できるヒントを得たい」「檀家の枠を越えて、地域とコミュニケーションを図る術を知りたい」「人が集まるお寺とはどういうものか、地域のニーズをつかみたい」......。地域、宗派、年齢、立場などさまざまな皆さんでしたが、一様に「地域」「協働」「公益性」などの課題に真剣に取り組みたいという思いが伝わってきました。
お寺の公益性と地域との協働を学ぶ
レクチャーでは神が、「なぜ、今お寺の公益性が問われているのか」というテーマで、寺院を取り巻く状況を、全青協付属の臨床仏教研究所で実施した「寺院意識調査」の結果分析をもとに解説しました。ここでは「時代の流れ中で寺壇制度の形骸化が進み、葬儀やお墓に関しての意識も変化している」という現状を述べ、宗教的儀礼や布教活動は大切としながらも、「お寺と地域社会との協働」の重要性を、寺院・僧侶によるさまざまな実践事例を紹介しながら提言しました。
次に、「参加と協働のまちづくり~新しい共同をデザインする~」をテーマに世古氏が講義。まずは日本の社会構造と市民社会の現状を理解することが必要と、民間非営利組織セクターの概念整理として、NPOとボランティアの違いなどを解説したうえで、「市民社会では、お寺もこうした民間の非営利組織の一つである」ことを説明しました。
そして、「新しい公共」の概念を提言。公共は行政の独占物ではなく、公共の仕事は、自治体とNPO(市民活動団体)が協働して行うことだと語りました。さらに、そのためには意識改革を行う事が不可欠で、互いの領域設定と役割分担の明確化が必要と指摘。「協働」のためには、まず「共感」をどのように作り出し、マネージメントしていくかが現代的課題だと解説しました。
NPOの実践事例としては、「食」を核にしたコミュニティー支援を目的として自身が提唱、全国展開させている「コミュニティーレストラン○R」を紹介。生活支援やコミュニティーセンター機能など、大きな可能性を持つこの活動は、寺院と地域の協働の実現としてきわめて有効であることを力説しました。
つぶやきを形に
そして参加者は、いよいよ5~6人にグループ分けされ共同作業を開始。最初に行ったのは、「ウイッシュ・ポエム」。「こんなお寺だったらいいな」というテーマで、各自が紙に自分の思いを一つだけ書いていきます。
「子どもがたくさん来るお寺だったらいいな」「いつでも相談にのれるお寺だったらいいな」など、それぞれの思いが並びます。そして、なぜこれを書いたかという思いをグループ内で発表。コーディネーター役を決め、全員の情報を共有したのち、どの順番につなげ一つの「詩」にするか、タイトルは何にするのかなどを皆で決めていきます。
これは思いを形にするための最初の手法で、実は、「○○だったらいいな」という希望の裏側は「課題」や「問題点」でもあるという種明かしがありました。
その後のワークショップでは、さらに課題(希望)を細かく抽出した後に、付箋なども使用して項目ごとに整理。最終的にグループ内で優先する課題を話し合う「課題整理」~「合意形成」のプロセスを体験しました。
最終目標でもある「合意形成」という結果はもとより、その過程でどのくらい自分の思いを伝えられたか、他者の思いを聴けたかが、実際の活動の場では大きなポイントにもなるようです。
今回は、そうした過程の中で「つぶやきを形にする力」「思いを仕組みにしていく力」を備えるコーディネーターのあり方が重要になっていくことも体感できました。
参加者の間では、2日間のワークショップと懇親会などを通して新たな共感が生まれ、今後の情報交換や再開を約束しあう姿が見られました。
全青協も、大勢の参加者との出会いや直接の語り合いを通じてたいへん大きな刺激をいただきました。「これからのお寺」について悩み模索しながらも、前を向いて真摯に歩みだしている力強い動きがあることを実感できた講座となりました。
これから青少年問題に取り組みたいと考えている僧侶や教育者、一般の方々に対し、電話により皆様が相談を受けていく際の心構えや技能を習得していただく目的で開催いたしました。また、お寺で相談窓口設置していくにあたり、その運営についての具体的なコンサルテーションを行いました。
相談業務を始めたいとお考えの方のみならず、現代青少年問題について理解を深めたいとお考えの皆様に参加をいただき、無事終了いたしました。