寺子屋ふぁみりあ

2012.02.29

ひきこもり家族のライフプラン

2月の寺子屋ふぁみりあは、2月29日、雪の降る最中に、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生をお招きして、「ひきこもり家族のライフプラン ~高齢化するお子さんの生活設計の考え方~」と題してご講演いただきました。

講演の抄録

皆様、初めまして。ファイナンシャルプランナーという仕事をしております畠中と申します。
雪の中、お越しいただいてありがとうございます。

まず、「ライフプランの前提条件」についてです。
前提条件につきましては、働けない状況が続く前提で、親御さんが持つ資産でお子さんが一生食べていけるプラン、すなわち「サバイバルプラン」を立てていきます。
正社員にならなくても生活設計を立てることは可能ですし、最初から生活保護を受給するために自治体に行ってくださいといったケースは、ほとんどありません。
何とか親御さんの持っている資産を活用して、生活保護を受給しなくても生きていけるプランを目指しています。
あと、私はひきこもりの状態につきましては専門家ではありませんので、状態の緩和とか改善に関してはコメントしません。

ここから各論のお話をさせていただきます。
「親の資産の洗い出し」はとても重要です。
ご自分達の資産、不動産、預貯金、有価証券とか、すべて時価で書き出していただきます。
不動産の現在価値についてもご理解いただくようにしております。
不動産はライフプランの中で重要になってくるのに、不動産の価値を知らない方が多いからです。
そしてご自分達の年金生活を考えていただきます。
親御さん自身の生活設計が成り立たないと、結局、サバイバルプランも成り立たないものですから、親御さんに自分たちの生活と、配偶者が亡くなった後の生活費、赤字額についても具体的に計算していただくようにしています。
介護が必要になったらとか、闘病したらなど、親側のリスクへの対応策も検討します。
それから親の資産の管理を誰に委ねるかです。
成年後見制度に関してはすごく勉強されていると感じますが、中には費用的に難しい方も勉強されていますね。
それぞれのご家庭の資産額によって、利用できる制度も変わってきますので、自分のお金に見合った後見人を探すように働きかけています。

次が「親の『終の棲家』を考える」です。
健康に自信がなくなったり、要介護状態になった場合は、早めの住み替えがおすすめですが、お子さんを残して住み替えは可能でしょうか。
これに関しては、私の方で解決はできません。
自宅介護は、実は結構お金がかかります。
介護度が高くなると、費用がかさむために、お子さんにお金を残しにくくなります。
「介護型ケアハウス」や「介護付有料老人ホーム」に転居した方が、資金的には楽になるかもしれません。
最近は、親子同時転居のプランもシミュレーションするようにしています。
親子別居を想定した、親の住み明けプランも、親が健康なうちに検討していくことが望まれます。
私は高齢者施設をたくさん見てきていますので、自分が見てきた中でここは良いのではという所はご紹介するようにして、見学にも行ってもらうよう促しています。

また、ひきこもりのお子さんに資金を残すために、「保険を活用した資産継承」のことも考えていただくようにしています。
生命保険は受取人固有の資産となるため、たとえ相続でもめても、遺産分割されることはありません。
保険料を一括で支払うことにすれば高齢になっても加入でき、さらに生命保険会社によっては、病歴、持病などの健康面の条件が緩和されることもあります。
あと「生命保険信託」は、資産に余裕のあるご家庭向きの仕組みではありますが、確実にお子さんに、分割して生活費を渡せるという意味では、活用する場面が出てくるでしょう。

「お子さんひとり期の生活費」ですが、一つの目安は一ヶ月10万円で、住まいのない場合は16万円くらいです。
週に1回でもいいので、できる限りお釜の大きさに合わせて目一杯ご飯を炊いて、それを冷凍保存するテクニックは必ず教えてください。
これはゴミを減らす意味でも重要です。
おかずはネットスーパーとかコンビニ宅配とか、今たくさんあります。
固定資産税や国民健康保険料、ライフライン(電気、ガス、水道代)は、お子さんの平均寿命分を口座に入金して下さい。
自動的に引き落としができる仕組みを作ってあげないと、固定資産税をずっと滞納して、家が差し押さえられたら、お子さんは行き場がなくなります。

ここからが「お子さんの現実と向き合う」ことになります。
親御さんの資産で、お子さんは何歳くらいまで生活ができそうか、ざっと計算してみて下さい。
ポイントは国民年金の加入状況です。国民年金も単純に滞納しただけだと、障害年金を受給する権限もなくなってしまいますので、なるべく国民年金の保険料は払って下さい。
また、お子さんがひきこもって働けない現実があったとしても、親御さんだけが受診していて、お子さんに受診歴、治療歴がない状況だと、生命保険に入れる可能性があります。
そして金融機関や担当者の、誰になら助けを求められるのかを考えていく必要があります。
さらに住まいの確保に関してです。
住まいがあるかないかで、お子さんの生活設計が成り立つかが、分岐点になってきます。

「不動産の活用方法」についてお話しさせていただきます。
不動産の資産としての価値を知るために、時価を客観的に調べてもらうお話をしましたが、選択肢としては、①そのまま住み続ける、②建て直す、③賃貸併用住宅に建て替えるというのがあります。
私は「金融商品型リバースモーゲージ」という活用方法をご紹介しています。

今度は、「兄弟姉妹との関係」を考えてみたいと思います。
例えば「自分達がお前に残せるのはこの保険金だけだけれども、何とか保険に入ったので、これ以外のお金はあいつに残してやりたい。本当に申し訳ないけど納得してほしい。」と、ご兄弟に口頭でとにかく親御さんの思いを伝えて下さい。
成年後見制度は、ご兄弟に頼めないケースもかなり多いです。最近は「エンディングノート」もはやっていますが、なるべく細かくいろいろなことを書いていただくようにしています。

おしまいに「お子さん自身の手続きに向けて」です。
金融機関や保険会社の連絡先リスト、口座番号のリストをきちんと書き出しておきましょう。
口座番号がわかったり、どこに行けば何ができるかがわかるノートを、できるだけ早く作成して下さい。
成年後見人を頼むなら、親が健在のうちに後見人に引き合わせておくことも重要です。
あと、自治体の窓口に出向いて、手続き場所や手続き方法をお子さんに教えておく作業もぜひしていただきたいです。

絆をつむいで 晴れ晴れ・イキイキ生きるには
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