寺子屋ふぁみりあ

2016.09.29

ひきこもり問題の解決に向けて~困難事例への対処~

6月2日の寺子屋ふぁみりあは、ひきこもり訪問サポート士でフリーライターの石川清さんをお招きし、「ひきこもり問題の解決に向けて~困難事例への対処~」というタイトルでご講演いただきました。

日本とアジアの関係をテーマに、フリーライターとして活動されていた石川さんは、15年程前から埼玉県朝霞市を中心にひきこもり支援を始められました。月に一度の家族教室や年間800回にものぼる家庭訪問をされる一方で、ひきこもりの子ども達と一緒に海外や沖縄に旅行をし、日常とは違う環境の中で自分自身を見つめることでひきこもり状態を脱してもらうという活動もなされています。

石川さんは、

 1、どのようなケースでも対応する

 2、良い所を見つけて伸ばし、社会への適応力や突破力、自信を身につけさせる

 3、ひきこもりを抱える家族や周辺環境の課題や問題を解決することにも努める

 4、原則として個別対応する

を訪問支援の方針に掲げ、「治療する、ケアする」という意識よりも「成長してもらう」ことに重きを置いて活動されています。ひきこもり支援は、一人ひとりに合わせて丁寧な対応をすることが重要であり、それぞれの性格や状況によってもアプローチの仕方は変わってくるので、家族だけで解決しようとせず、できるだけ早いうちに専門家に相談することが肝心であるとアドバイスいただきました。

 

 石川さんは、ひきこもりを脱するまでに3つの壁があるといいます。第一の壁は「孤立の壁」で、そこでは「コンビニに行ける」「家族とは話せる」など、孤立状況の打破が求められます。そして、第二の壁は「成長の壁」で、「他人と一緒に楽しい経験をする」など、精神的自立を目指します。第三の壁は「自立の壁」で、いよいよ「家離れ」「就職」といった本格的な自立に向かっていきます。石川さんによると、このプロセスを丁寧にクリアしていけば、たとえ長期のひきこもりであっても改善することが可能であるそうです。

 

また、石川さんは、ひきこもりが長期化する要因として、主に3点挙げられました。一つめは「嫉妬」です。嫉妬は、経験値が少なく、小さな価値観でしかものごとが判断できないことによって生じます。嫉妬の強い人は、プライドが高く誰かと比較して負けたくないので、不戦敗症候群に陥りやすいそうです。これを脱するには、多様な価値観を持つことが重要で、そうすることで、ものごとを俯瞰して見られるようになるそうです。二つめは「対人緊張」です。そのなかでも、ひきこもりの人は、特に「対日本人緊張」が強い傾向にあるそうです。三つめは「コンプレックス」です。コンプレックスが強いばかりに、支援者に誉められても信じないという人も多いようです。コンプレックスを取り除くには、支援者に限らず誰からも凄いと言ってもらえるようなエピソードを持っていることがポイントだそうです。

石川さんは、ひきこもりから脱却する一つの方法として、海外旅行が有効であると強調されています。考え方や文化の違うところに赴き、見ず知らずの人と交わり助け合うことで、多様な価値観が養われます。また、日本人のいないところに行けば、対日本人緊張も緩和されます。そして、海外旅行をすることで、人に自慢できるようなエピソードも得られます。したがって、海外旅行は、ひきこもりの3つの要因を網羅的に緩和することができ、脱却に向けて有効的な手段であると感じました。

 

講演の後半では、実際の事例を挙げながら、それぞれの状況に応じたアプローチの仕方が紹介されました。石川さんのお話は、豊富な経験に基づいて、理論的かつ具体的であり、全体を通してとても有意義な会となりました。石川さんは、ひきこもりから脱するためには、とにかく「孤立していないこと」が重要であると、度々強調されていました。当事者にとっても、その家族にとっても、ひきこもりからの脱出には、家族間・友人・支援者・病院など、できるだけ多くの「つながり」を確保しておくことがポイントであると感じました。

本当のしあわせ 生活の中の自分
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