寺子屋ふぁみりあ

2015.06.25

実例から学ぶ長期ひきこもりからの脱出~その準備と実践~

 6月4日の寺子屋ふぁみりあは、ひきこもり訪問サポート士でフリーライターの石川清さんをお招きし、「実例から学ぶ長期ひきこもりからの脱出~その準備と実践~」というタイトルでご講演いただきました。
 日本とアジアの関係をテーマに、フリーライターとして活動されていた石川さんは、15年程前からひきこもりの支援を始め、月に一度の家族教室や年間800~1000回にものぼる家庭訪問を行っています。また、近年はひきこもりの子ども達と一緒に海外や沖縄に旅行をし、日常とは違う環境の中で自分自身を見つめることでひきこもり状態を脱してもらうという活動もされています。
 石川さんは「相談があればどんなケースでも対応すること」と「個別対応をすること」を訪問支援の原則とされており、一人ひとりに合わせた丁寧な対応をしていけば、長期のひきこもりでも改善することができると、おっしゃいます。

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 石川さんは、現代日本社会の大きな特徴として、「経済的格差」と「つながりの希薄化」を挙げています。それに伴って、「経済的貧困」・「つながりの貧困」という二つの問題が生じ、その両者が相俟ることで、ひきこもりが生まれると、指摘されています。また、現代日本におけるひきこもり家庭の問題に「親の高齢化」があります。今は親に依存しながら生活できていても、親が居なくなったときに、経済的貧困とつながりの貧困が同時に訪れ、大きな孤立化を招きます。したがって、ひきこもり状態における当面の課題とは「孤立化の解決」にあり、依存しながらも少しずつ「自立」へのアプローチをしていくことが求められます。
 石川さんによると、自立には、自分でお金を稼ぎ生活に必要なものを自分自身で調達できるようになる「経済的自立」、炊事・洗濯・買い物など身の回りのことが自分一人でできるようになる「身辺的自立」、自分で考えて行動ができ何か失敗したときにはそれを乗り越えることができる「精神的自立」の三種類があるといいます。孤立化の解決のためには、経済的自立・身辺的自立・精神的自立という三つの自立をある程度のレベルまで持っていくこと、あるいは、自立を助けるシステムを本人の周りに作ってあげることが大切です。しかし、日本において、ひきこもりに対するそのようなシステムはいまだ充分ではないと、石川さんは指摘されました。
 自立に向けては、具体的に

 ①家離れをすること(具体的には、風呂なしの物件に住むのが良いとのことです)
 ②一生の友人を作ること
 ③異性との深い交流
 ④経済管理(正しいお金の使い方ができること)
 ⑤大人になるための通過儀礼(いろいろな人と向き合うこと・いろいろな体験をすること・自分一人で修羅場を乗り越えること)

という五つのポイントが重要であると石川さんはおっしゃっています。

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 石川さんは、ひきこもり状態の方が依存体質からの脱却し、自立の方向へと移行することを目標に活動されていますが、それには海外旅行が有効であると、強調されます。日常の閉鎖的な関係性の中では人と関わることにプレッシャーを感じてしまうが、海外に出ればそこから解放され、プレッシャーのない関係性が築きやすいとのことです。考え方や文化の違うところに赴き、見ず知らずの人と交わり助け合うことで、人と人とのつながりに価値を持ち、今持っている考え方を柔軟に変えていく。このことが重要であり、海外旅行に行けばこれらのことを味わうことができると、と述べられています。

 ひきこもりの本人にとっても、その家族にとっても、地域社会や友人関係など人間的なつながりの中に入っていくことが重要であり、ひきこもりからの脱出には「つながりを確保すること」「孤立しないこと」がポイントであると、感じました。

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