寺子屋ふぁみりあ
2016.09.29
生活の中の自分
7月7日、今年度3回目の「寺子屋ふぁみりあ」が開催されました。今回は、NPO法人「くだかけ会」主催の和田重良先生をお迎えし、「生活の中の自分」というテーマでご講演いただきました。和田先生は、山の中でひきこもりの人と一緒に自給自足の生活をしています。また、その他にも電話相談や講演会など、ひきこもりに関するさまざまな支援をされています。
今回の「ふぁみりあ」は、7月7日の七夕当日の開催でした。「くだかけ会」は、毎年七夕の日に「お願い事」を書いてもらい、それを1年間保管しています。そして1年後に、改めてその願い事を見てみると、多くの人が願いを叶えているそうです。お願い事をするということは、言い換えれば目標を立てるということです。人間はお願い事をしたり目標を立てたりすることで、自然と願いや目標の方向を向いて生きていくのだそうです。先生は、生活の中で最も大切なことの一つとして"方向性"を挙げられました。つまり、どこに向かって生きていくかということです。お願い事があるということは、少なくとも「願い」の方を向いて生きているということです。そこで和田先生は、七夕の日には、たとえどんなに小さなことであってもお願い事をすることをお勧めするとおっしゃっていました。
今回の講演のテーマは「生活の中の自分」ですが、「生活とは何か」「自分とは何か」を考えることは、ひきこもりの人がそこから抜け出すための重要なポイントになるそうです。そもそも、「生活」と「自分」とは密接な関係にあり、「自分とは何か」を考えると、そのヒントは「生活」の中にあるのだそうです。
和田先生は、ひきこもりの人の心には"絶対に信じられないもの"があるとおっしゃいます。その一因に、「科学的根拠という言葉に弱い」「知識だけに基づいて○×を付けたがる」などがあるようで、ひきこもりの人は、"あれ"と"これ"とを比較して、こっちが正しい、あっちは間違っていると決めつける傾向にあるそうです。それによって、"絶対に信じられないもの"ができあがります。そこで、ひきこもりから抜け出すには、絶対に信じないという頑なな心を開いていくことが大切で、そのためには、生活の中で、目には見えない大きな力を感じる"体験"が必要だそうです。
一つめのポイントは「学ぶこと」です。"本当のこと"は自分が今まで信じていなかったことの中にこそあり、それは教えられるのではなく、学ぶことによって発見できるのだといいます。山の中で自給自足の生活をしていると、心と体で本当に多くのことが学べるそうです。
二つめのポイントは「遊ぶこと」です。何事も、遊びでないものは結果が伴われるので気が重くなります。それに対して、遊びは気楽にできます。山での生活はいくら失敗してもよく、思いっきり遊ぶことができるので、積極的に行動でき、多くの発見があるそうです。
このように、山での生活には、たくさんの新しい発見があり、それによって新しい価値観が生まれ、科学的根拠や知識よりも大切な"信じられるもの"が見つかります。そして、同時に、新しい"自分"も見つけることができます。
和田先生は、遠くの理想ばかりを求めては、目の前の小さなことすらできなくなってしまうとおっしゃいます。生活の中の小さなことにこそ充実感があり、食事でも皿洗いでも掃除でも、どんな小さなことでも一生懸命向き合えば、確実に充実感が得られるといいます。
先生の講演を通して、社会的地位や肩書ばかりにとらわれず、仕事や学歴の有無に恐れず、ありのままに、自信をもって、自分らしく生活することが、何よりも大切なことであるのだと感じました。