てらネットEN
2004.05.28
不登校・ひきこもり対応寺院ネットワーク―第3回設立準備会議
平成16年5月28日(金)、東京・築地本願寺にて「不登校・ひきこもり対応寺院ネットワーク第二回準備会議」が開催されました。
全青協では、寺院において不登校・ひきこもり問題に取り組む各寺院をネットワーク化し、全国の青少年及びその家族のサポートを行う準備を進めていますが、今回の会議は、その準備のための第二回めの会議となります。
会議前半ではフリースクール・東京シューレ代表の奥地圭子さんを招き、不登校の現状や本ネットワークへの提言をもらいました。また後半では、前回会議での議論を踏まえ、具体的な活動内容の詳細を参加各寺院と話し合いました。
複雑化する現状
奥地さんには、不登校に関連する出来事として近年特徴的に見られるさまざまな話をしてもらいました。奥地さんによると、近年は保健室、相談室、図書室、校長室、廊下など、教室の中以外の場所で過ごす「別室登校」の子どもが増加していることや、学校がその子たちを出席とみなしているため、文部科学省発表の最新の統計では不登校が減少しているように見える事など、一見すると見えにくい変化を指摘してもらいました。また、眼が見えない・動けない・じんましん・血を吐くなどの重い症状が理由の病欠による長期欠席のうち、9割が心理的なことが原因で生じており、不登校につながっているという大学の調査結果の報告がありました。
国の対応に関しては、90年代のソフト路線から、学校復帰を前提とした働きかけが強まっている事が報告されました。例えば校長先生のアポイントなしの家庭訪問や、子どもの顔を見るまでは帰らないといった働きかけが散見されるそうです。他に、フリースクールの出席日数を学校の出席日数にカウントするため、以前は一学期に一回の報告が求められていたものが、最近では毎日のように報告を求める学校もあるとの事です。このように、学校側の働きかけとしては、「学校に行ったか行かないか」という形式的な面が重視されるようになっている現状があるようです。
その他にも、軽度発達障害・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)など、障害を持った子どもの不登校が全体の2割近くに増加していること、不登校は病気であり治すべきものとしてとらえる風潮が出てきており、例えば精神安定剤など10種類もの薬を医者に処方され、それを一日3回服用しながら生活している子どもが増えている事に見られるような「過剰医療」の問題が取り上げられました。さらには、家庭内暴力の子どもへの強引な入院措置(警察や、いわゆる搬送屋と呼ばれる人などへの依頼)の問題、虐待された子どもの不登校の増加など、複雑化が進む不登校の現状を詳細に報告してもらいました。
お寺への要望
奥地さんから、ネットワーク参加寺院に対しての提言や意見として、まず、子どもを理解していく際に親に対する取り組みも同時に行う事の重要性が述べられました。親自身の不安や固定観念が強いと、子どもの立場に立って子どもの心を理解し、不登校に対する考えを深める事が難しいからだそうです。今後ネットワークが居場所を作りながら親へのサポートを並行して行うことを活動に盛り込む必要性を認識する貴重な意見をもらえました。
2点目として、お寺に「駆け込み寺」的存在になって欲しいという要望をもらいました。特に奥地さんは、お寺で様々な経験をさせてもらうことができればなお良いが、それが無理でも空間を生かした気軽に行ける場所、つまり何か困った事があればとりあえずお寺にいけるという、地域の中での居場所としてお寺を提供してほしいということを強調していました。
最後に、仏教の教えを生かした価値観をもって子どもに接してほしいという要望が出されました。大人と子どもが上下関係や治す人と治される人という関係ではなく、仏教が持つ目前の人を一人の人として見ていくこと、「不識」の姿勢で子どもに接して欲しいということでした。
幅広い参加を
会議後半の議論では、子どもを宿泊で受け入れられる寺院のみにこだわることなく、現在できる活動の範囲で幅広くネットワークに参加してもらう方向性が確認されました。自坊で出来る活動が具体的にイメージできる方々にはぜひ参加をして欲しいと思います。また、不登校・ひきこもり以外の支援を行っている寺院にも参加をしてもらい、柔軟に対応できるネットワークを構築していく方向性で意見がまとまりました。悩める青少年の力になりたいとお考えの住職に広く本ネットワークへの参加と支援をお願いしたいと思います。(隆)